また三菱電機で、工場のISO9001の認証が一時停止されたといいます。これで2例目です。共同通信によると、検査の過程で適切な管理を実施していないと判断されたものによるといいます。認証の停止で、一部の入札案件に参加できなくなる懸念があるそうです。
ISO9001は、「品質マネジメントシステム」の国際規格のことです。この認証を保有していることが、優れた製品やサービスなどを提供していることの保証ではありません。
ISO 9001の目的は、よい製品やサービスを提供するため、システムを管理することといわれます。顧客が要求する製品やサービスが提供すれば、お客さんに満足していただけることができます。ISO9001もこれを目指しているといいます。
仕事において「信用取引」が常識です
「人が従事するどんな職業と比べても、商売ほど人間性がきびしく試される職業はありません。商売では、正直さ、無欲さ、公正さ、噓をつかないことが、厳密に問われます」と、サミュエル・スマイルズは「セルフヘルプ(自助論)」で説いています。
信用取引のシステム(これは信義ベースにして成り立っています)を見ても明らかなように、ビジネスマン同士がお互いを信頼しきっているさまは、それが現実のビジネスで実際に目にするごく日常的な光景でなければ、とうてい信じられないほどです。(中略)
商人が習慣的にお互いを暗黙のうちに信頼してあっているさまは、正に感動的といえましょう。
彼らは地球のまるで反対側にいる代理人を信用するばかりか、それまで会ったこともないのに、推薦状をもったきただけの人物に莫大なお金を託したりします。これにまさる人間賛歌があるでしょうか。 (引用:大人の気骨 サミュエル・スマイルズ 編訳:山本史郎 P111)
「仕事」は信用取引で成り立っています。
スマイルズが指摘したようにお金の支払いにおいてもそうです。会社間取引においては商品を先に渡して、その後で代金を回収をします。相手の信用が低いと、先払いが要求されます。そして、その送られてくる商品は当然良品であって、まさか不良品が送られてくるとは誰も思っていません。
常識がゆえにその”ありがたみ”をついつい忘れてしまい、手抜きしたりするのでしょうか。
サービスとは、お客をもてなすこと
このコロナ渦で地方の百貨店が深刻な影響を受けているそうです。青森県八戸市の百貨店が苦境にあるといいます。読売新聞によれば、その百貨店では全従業員の7割に解雇を通知したといいます。
外乱なのでしょうけれども、お客さまの心が離れてしまえば、商売は立ち行かなくなります。
「商売をするときには、たっぷりと盛り上げて、あふれるくらいという精神で、客に奉仕しなさい」とスマイルズはいいます。
「奉仕」、安く売ったりすることではないようです。「報酬を求めず、また他の見返りを要求するでもなく、無私の労働を行うこと」、それに近いのでしょうか。
英語で言えばサービス(service)。英語のサービスには、貢献とか、役立つ活動のことなどの意味もあります。
「客をもてなすこと、また、顧客のためになされる種々の奉仕」、例えば、「サービスのよい店」など、そんな語感なのでしょうか。
来店できないお客様をどうもてなすのか、それが問われていたのかもしれません。
我 人の諸(これ)を我に加うるを欲せざるや、吾も亦(また)諸を人に加うること無からんと欲す
他人が、自分の上に出ていささかでも圧をくわえるようなことを容赦できない。同様に自分も他人の上に出て、これを抑えるようなことのないように努力したいとの意味です。
強要されるよりは、自発的に動いた方が気持ちはよいものです。強要することが企業文化になっていたりしたのでしょうか。
奉仕とは、人のために力を尽くすこと
「奉仕、人のために力を尽くすこと」、例えば、「休日は家族にサービスする」、そんな形で仕事においても、自発的にサービスを表現できればいいのでしょう。
自分に寄せられた信頼をよくわきまえ、何がなんでも、それを守ろうとする
したがって、自ら身を低くして、富、名誉、世俗の地位を求めることはない
そちらのほうが彼についてきて、恵みの雨のように彼の頭上にさんさんと降り注ぐ
(引用:大人の気骨 サミュエル・スマイルズ 編訳:山本史郎 P114)
人それぞれに与えられた役割があります。ISO9001は、その役割が規定されたコンパスのようなものかもしれません。
その役割に寄せられる期待と信用。どんな役割でもそれがきちんと機能しなければ、三菱電機のように信用を棄損させることになってしまうのでしょう。