「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

よい結果を早く得たいと思うと【速やかに成らんと欲する者なり】米二コラの失敗から~ 炉辺閑話#22

 

 米国の電動トラックの新興メーカー ニコラの創業者トレバー・ミルトン元会長が詐欺罪で起訴されたといいます。

米連邦検察当局はニューヨークの連邦地裁に提出した起訴状で、ニコラの筆頭株主であるミルトン元会長が「自身の富と名声のために詐欺的な計画を実行し、事業のほぼ全てにおいて虚偽の説明をした」と指摘した。 (出所:日本経済新聞

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 日本経済新聞によれば、米証券取引委員会がミルトン元会長を提訴したといいます。ミルトン元会長がSNSなどで虚偽の説明を繰り返し、数千万ドルの個人利益を得たと訴えているそうです。

 

不義にして富み且つ貴きは、我に於いては浮雲の如し

 富貴の生活、豊かな生活、それを否定するのではないが、もしそれが「不義」つまり不正を行うことによって得たものであるならば、この私には空に浮かぶ雲のようなものにすぎないと、論語「述而第七」15にあります。 

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 不正をしてまで名声や地位を得ると、さらなら貪欲が生まれたりするのかもしれません。

富 求む可(べ)くんば、執鞭(しつべん)の士と雖(いえど)も、吾も亦(また)之を為さん。如(も)し求む可からずんば、吾が好む所に従わん」と「述而第七」11にあります。

  儲かることができるものならば、通行者の整理のような仕事であろうと、私はそれをしよう。しかし、それによって特段儲かるような仕事でないのならば、貧乏を覚悟で自分の好きな道に没頭して暮らしたいとの意味です。 

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「まっとうな生き方によって得られるならば、どんな賤しい仕事についても金儲けせよ。しかし、まっとうではない手段をとるくらいなら、むしろ貧賤でいなさい」と渋沢栄一は解しています。

 この言葉をミルトン元会長が知っていたなら、違った結果になっていたのかもしれません。

 

 君子は急に周(あまね)くして富めるに継がず

 孔子冉有の問答に、 「君子は急に周(あまね)くして富めるに継がず」との言葉があります。

 外出中の公西赤の母に留守見舞いとして粟を贈ってくださいと冉有が願いしたときに、孔子が答えた言葉です。

「君子 教養人は、相手が急場で困っているときには手厚く援助し、豊かであるときにはわざわざ継ぎ足すようなことはしないものだ」との意味です。

 公西赤が使いに出るときに、立派な馬に乗り、軽裘を着て行ったことを孔子は知っていたようです(「雍也第六」4)。 

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 二コラの騒動を思えば、出資する側にも、人物を見極める目が少し欠けていたのかもしれません。

益を求むる者に非(あら)ず。速やかに成らんと欲する者なり

「憲問第十四」44にある言葉です。客の取り次ぎをする童子を見て、孔子が言ったことばです。

「この子は子どもなのに隅に坐らず、上席に平気で坐っている。成人には一歩退(さが)って随行すべきなのに、並んで歩く」。そういうのを私は観ている。

「良いものを学ぼうとする者ではない。ただ速く成人なみになりたいと思っているだけの子である」と、孔子が述べたといいます。

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 この童子のように利益を求めながら、ついつい先を急ぎたくなることがあるのかもしれません。人が陥りがちな過ちということなのでしょうか。投資家とその投資を受ける経営者の関係にもありがちなことなのかもしれません。

 ミルトン元会長、投資家も一歩先行く、テスラに追いつこうとその意識ばかり強くなってしまったということなのでしょうか。そうみれば、起こるべくして起きたことなのかもしれません。

 

「参考文献」