「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

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【大谷翔平と論語と算盤】その活躍は渋沢栄一から学んだ常識か ~論語と算盤 #8

 

 米メジャーリーグで飛躍する大谷翔平選手。「二刀流」での大活躍は、これまで「常識」を覆しました。

 そして、驚きは大谷選手が、実は「論語と算盤」の愛読者だということです。人間性を磨くために、「論語と算盤を読む」という目標を立てていたというのです。 
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 目標を達成するため、大谷選手は「マンダラート」を高校時代からをつくっていたといいます。プロ野球選手になってからもその習慣は変わらず、「大リーグを目指す」という目標をマンダラートの真ん中に書いていたそうです。

その目標を達成する8つの要素の一つであった「人間性」を達成する要素のマスの中に書いてあった内容が目を引きました。「論語と算盤を読む」でした。 (出所:AERA dot.)

  AERA dot.によると、大谷選手に「論語と算盤」を勧めたのは栗山英樹監督だといいます。栄一の言葉から気持ちを立て直した自身の経験から、入団選手が1年目のシーズンを終えると、必ず全員に「論語と算盤」を渡しているそうです。 

 

 その栗山監督は大谷選手の「二刀流」の育成にあたり、世間からの批評に屈せず、「人間は、なぜ前例がないものを否定するんだ?」「なぜ見えない未来を、信じようとしないんだ?」と疑問を感じていたといいます。そして、あくまで大谷選手本人の意志「二刀流」を尊重したといいます。

 大谷選手活躍の原動力は、本人の強い意志に加え、常識にとらわれない、周囲の理解と支えがあったからなのでしょうか。 

現代の人は、よく口癖のように「意志を強く持て」という。しかし意志ばかり強くてもやはり困りものでしかない。俗にいう「猪武者」のような人間になっては、どんなに意志が強くても社会で役に立つとはいえないのである

と、渋沢栄一は「論語と算盤」でいいます。

 大谷選手、こうした栄一の言葉から学びを得ていたのでしょうか。

智、情、意

知恵と情愛と意志の三つがあってこそ、人間社会で活躍でき、現実に成果をあげていけるものである

 栄一は、何かをするときに極端に走らず、頑固でもなく、善悪を見分け、プラス面とマイナス面に敏感で、言葉や行動がすべて中庸にかなうものこそ常識で、それを心理学的に解釈したのが、「智(知恵)、情(情愛)、意(意志)」だといいます。

 そして、強い意志のうえに、聡明な知恵を持ち、これらを情愛で調整する。さらに三つをバランス良く配合して、大きく成長させていってこそ、初めて完全な常識となるのだといいます。 

 

 おおそ人として社会で生きていくとき、常識はどんな地位にいても必要であり、なくてはならないものである。  (引用:「論語と算盤」 渋沢栄一 P65)  

 大谷選手が作るマンダラートに、その常識を観ることができます。真の常識が、二刀流はプロでは通用しないという今までの常識を覆したともいえそうです。

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論語の教え

忠告して之を善道し、可(き)かれざれば則ち止(や)む。自ら辱(はずかし)めらるること毋(なか)れ」(「顔淵第十二」23)との言葉があります。

 弟子の子貢が孔子に、友人との人間関係について質問すると、「まごころを尽くして告げ、善いほうへと勧めよう。にもかかわらず、従わないときは、もう何もするな。誤解され、恥をかいてはならない」と答えたといいます。 

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 常識的な観察で、相手を見て法をとけ、正論をうるさがってこちらを疎んずるようなつまらぬ友人には、ほどほどにしておくほうがよいというほどの意味なのでしょうか。

 逆に言えば、世間の評判ほどあてにならないものはない、心ある人のアドバイスに耳を傾けよといっているようにも聞こえます。

 

どれだけ学識があったとしても、よいことをよいと認めたり、プラスになることをプラスだと見抜いて、それを採ることができなければ、学問が宝の持ち腐れになってしまうと栄一は言います。

 人は大谷選手を評価しますが、その知恵を活かすことができないでいるのかもしれません。

 誰かほかの人が同じようなチャレンジしようするときに、彼の成功を知りながらも、すぐに「できるはずがない」とアドバイスします。

「彼には才能がある」。「運がある」、そんな言葉がよく使われます。

 何かをやる前から、こんなことを言われたら、これほど人を傷つけるものはないのかもしれません。

 もともと知恵が人並み以上に働く人は、何事に対しても、その原因と結果を見抜き、今後どうなるかを見通せるものだ。このような人物に、もし情愛がなければたまったものではない。

その見通しさの良さを悪用して、自分がよければそれでよいという形で、どこまでもやり通してしまう。この場合、他人に降りかかってくる迷惑や痛みなど、何とも思わないほど極端になりかねない。

そのバランスの悪さを調和していくのが、「情」なのだ。 (引用:「論語と算盤」 渋沢栄一 P67)  

 

 大谷選手は自身の「才能」や「運」までもコントロールしようとしていたのでしょうか。彼の「マンダラート」を見ると、そのことがわかります。「運」まで味方にしようとする努力には驚きです。

 大谷翔平、これからの活躍に期待したいですね。次はオールスターゲーム、どんな活躍を見せてくれるのでしょうか。

 

「参考文献」