「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

博学篤志、切問近思【博く学びて篤く志し、切に問うて近く思う。仁 其の中に在り】 Vol.483 ~現代の篤志家は誰か

 

子夏(しか)曰わく、博く学びて篤(あつ)く志し、切に問うて近く思う。仁 其の中に在り。(「子張第十九」6)

 

(解説)

子夏の言葉。「知識を広めて十分に記憶し、(発憤して)問題を立てては、自分のわからないことを解こうとする。仁 人の道はその中にある論語 加地伸行)  

 

 加地の読みにこだわらず、この章もそのままに読んだ方が良くなかろうか。

 博學而篤志、切問而近思、仁在其中矣

 博学篤志、広く学びて、志を篤くする。

 篤志、あついこころざし。協力援助する気持をもつこと

 切問近思、知らないことを身近な問題として取り上げ、熱心に問いただして考える。 

 切問、切に問うこと。

 子夏は、「仁」はその中にあるんだなという。

 

 博学は孔子のことを思って出てくる言葉なのだろうか。

dsupplying.hatenadiary.jp

博学にして名を成す所無し

今も昔も専門の看板を掲げて、この一筋に生きている、ほかのことについては一切無知であるという顔をするのが、純粋に見えて出世の早道であった。雑学はいつも貶(けな)し言葉である、桑原は解説した。 

 逆説的に捉えれば、専門知識を磨き尖らせば、目立ちはするが、「仁」人の道にから離れていき、ぎすぎすと社会になってしまうとも感じる。

 

  

 「篤志」、英語では「Philanthropy」が適当なのだろうか。他にも、「charity(チャリティー)」や「volunteer(ボランティア)」などが思いつく。

「Philanthropy(フィランソロピー)」、博愛主義、慈善を意味する単語だが、基本的な意味では、人類への愛にもとづいて、人々の「well being」(幸福、健康、クオリティ・オブ・ライフ(QOL)など)を改善することを目的とした、利他的活動や奉仕的活動、等々を指すという。あるいは慈善的な目的を援助するために、時間、労力、金銭、物品などをささげる行為のことであるとWikipediaにある。語源からして「人類を愛すること」という意味があるそうだ。

「仁」、ということであろうか。

 専門を極めると、逆に「仁」に目覚めるのだろうか。現代の篤志家には、マイクロソフトの創業者ビル・ゲイツや米国の歌手 レディー・ガガなどいる。亡くなられたマイケル・ジャクソンも熱心な篤志家だったという。 

 専門家ばかりが注目されるのではなく、同じくらいに篤志家が注目されれば、利他の精神が社会に定着していくのかもしれない。

 博学篤志、切問近思

 そうすれば、国連の持続可能な開発目標「SDGs」への理解も深まるのだろう。

 

 

「子夏」、姓は卜(ぼく)、名は商。孔子より44歳若く、孔子学団の年少グループ中の有力者。文学にすぐれた、つまり最高の文献学者だったという。孔子晩年の弟子。孔門十哲の一人。後に魏の文侯に招かれ、その師となる。 

dsupplying.hatenadiary.jp

  孔子が外出しようとしたとき、雨が降ったが、傘がなかった。弟子が「子夏がもっていますよ」というと、孔子は「あれはケチだからなあ」と答えたという。続けて「人の長所を言い、短所を忘れることによって、長くつきあいができるのだ」と言ったと、加地は「孔子家語」の一節を紹介する。

 

(参考文献)  

論語 増補版 (講談社学術文庫)

論語 増補版 (講談社学術文庫)

  • 作者:加地 伸行
  • 発売日: 2009/09/10
  • メディア: 文庫
 
論語 (ちくま文庫)

論語 (ちくま文庫)

  • 作者:桑原 武夫
  • 発売日: 1985/12/01
  • メディア: 文庫