子夏(しか)曰わく、日々に其の亡き所を知り、月々に其の能(よ)くする所を忘るる無くんば、学を好むと謂(い)うべきのみ。(「子張第十九」5)
(解説)
子夏の言葉。「日々に新しいことを知り、月々に復習を怠らないようにするのであれば、学を好むということができる」。(論語 加地伸行)
学校で学ぶような読みよりも、そのままに読んだ方が良くなかろうか。
自分の弱点や欠点を知り、それを正していく、それこそが学びであり、その態度を身につけ習慣にしていく。そうすることで、新しい発見があり、新しい自分との出会いが生まれ、それが喜びになっていく。
子夏は「学而第一」7で、「賢を賢として色に易(か)え、父母に事(つか)えて能(よ)くその力を竭(つ)くし、君に事えて能く其の身を致し、朋友と交わるに、言いて信有らば、未だ学ばずと曰うと雖(いえど)も、吾れは必ず之れを学びたりと謂わん」という。
「賢者を尊敬し、父母に孝行で、君主によく事え、朋友に信があれば、正規の学問がなくても学問をした人間として評価したい」との意味し、個々の徳目よりも、むしろ、本を読んで正式の学問をしていなくても、実践的に立派であれば学問をしたといってよいと桑原は解説する。
専門知識ばかりの勉強ではなく、徳を身につける学習も必要であるとも解釈できそうだ。
「子夏」、姓は卜(ぼく)、名は商。孔子より44歳若く、孔子学団の年少グループ中の有力者。文学にすぐれた、つまり最高の文献学者だったという。孔子晩年の弟子。孔門十哲の一人。後に魏の文侯に招かれ、その師となる。
孔子が外出しようとしたとき、雨が降ったが、傘がなかった。弟子が「子夏がもっていますよ」というと、孔子は「あれはケチだからなあ」と答えたという。続けて「人の長所を言い、短所を忘れることによって、長くつきあいができるのだ」と言ったと、加地は「孔子家語」の一節を紹介する。
(参考文献)