「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

道の行なわれざるは、已 に之を知れり【其の身を絜くせんと欲して、大倫を乱る】 Vol.473

 

子路(しろ)従って後(おく)る。丈人(じょうじん)の杖を以て蓧(じょう)を荷なうに遇(あ)う。子路問うて曰わく、子 夫子(ふうし)を見たるか、と。丈人曰わく、四体 勤めず、五穀 分(ふん)せず、孰(たれ)か夫子と為す、と。其の杖を植(た)てて芸(くさぎ)る。子路 拱(きょう)して立つ。子路を止(とど)めて宿(しゅく)せしめ、雞(にわとり)を殺し黍(しょう)を為(つく)りて之に食らわしめ、其の二子(にし)を見せしむ。明日(めいじつ) 子路行(さ)りて以て告ぐ。 子曰わく、隠者なり、と。子路をして反(かえ)して之を見(まみ)えしむ。至れば則ち行(さ)れり。子路曰わく、仕えざれば義無し。長幼(ちょうよう)の節は、廃す可からず。 君臣の義は、之を如何ぞ其れ之を廃せん。其の身を絜(いさぎよ)くせんと欲して、大倫(たいりん)を乱る。君子の仕うるや、其の義を行なう。道の行なわれざるは、已 (すで)に之を知れり、と。(「微子第十八」7)

 

(解説)

子路孔子のお供をして遅れたことがあった。そのとき杖を使って蓧(あじか)を荷っている老人とであった。子路はこうたずねた。「あなたは孔子を見かけましたか」と。老人は「身を粉にして働きもせず、穀物の種まきもしない。そういう人を誰が先生としようか」といい、その杖を立てて草取りをし続けた。子路は敬礼して立った。老人は子路を止(とど)めて一泊させた。飼っている鶏をつぶし、黍を炊いて子路に食べさせ、自分の二人の子息とも引き合わせた。翌日、子路は立ち去り、報告した。孔子は「隠者である」と言い、子路を引き返して様子を見に行かせた。しかし、子路が訪ねてみると、老人は不在であった。子路は二人の子息にこう言った。「主君に仕えないと、君臣の契りがなく、君と臣とが守る倫理が生まれないで終わる。長と幼とが守る礼節はなくてはならないものである。君臣の倫理、これをどうしてよいものであろうか。乱世に身を汚さないという小倫理を守ろうとするのは、君臣の大倫理を乱すこととなる。君子 教養人が出仕しようとするのは、この大倫理を行なわんがためである。乱世のため道義が行われていないことは、重々承知の上である」と論語 加地伸行)  

 

 

  

「道の行なわれざるは、已 に之を知れり」、このコロナ渦もまた乱世のようなものなのかもしれない。

「其の身を絜くせんと欲して、大倫を乱る」、法令を守っているからといっても、個々人が己が為に行動すれば、倫理が崩れるのかもしれない。 

 

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(参考文献)  

論語 増補版 (講談社学術文庫)

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  • 作者:加地 伸行
  • 発売日: 2009/09/10
  • メディア: 文庫
 
論語 (ちくま文庫)

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  • 作者:桑原 武夫
  • 発売日: 1985/12/01
  • メディア: 文庫