或るひと曰わく、徳を以て怨みに報ゆるには、何如、と。子曰わく、何を以て徳に報いん。直を以て怨みに報い、徳を以て徳に報いん、と。(「憲問第十四」34)
(解説)
ある人が質問した。「仇(かたき)への怨みに対して怨みで報復するのではなくて恩恵を与えて解決するというのはいかがでしょうか」と。孔子はこう答えた。「それなら恩恵に対して、何をもってお返しするのだ。(怨みにも恩恵にも、お返しは同じになってしまうでないか。)怨みには怨みのそのままの気持ちを、恩恵には恩恵を、ということでよい」。(論語 加地伸行)
「徳」、この章では恩恵とするそうだ
「直」、文字通りなら、「直ぐ」と解すると加地はいう。従来、「直」は公平無私と解する。「老子」に、「怨みに報ゆるに徳を以てす」とある。
加地は仇に限定したように解する。そうであれば、「忠臣蔵」の物語の正当性も理解はできる。仇に限定せず、言葉通りに教訓的に受け取ってもいいのではなかろうか。
「直」という言葉からは、真っ直ぐ、素直、直きなどが想像できる。
(参考文献)