「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

【少しく有るに、曰わく、苟に完し、と。富みて有るに、曰わく、苟に美なり、と】 Vol.313

 

子 衛の公子荊(けい)を謂う。善く室に居(お)る。始め有るに、曰わく、苟(かりそめ)に合(かな)えり、と。少しく有るに、曰わく、苟に完(まった)し、と。富みて有るに、曰わく、苟に美なり、と。(「子路第十三」8)

 

  (解説)

孔子は、衛の国の公子、荊を高く評価していた。彼は、家政をみごとに運営した。はじめ、家財が少なかったとき、まあ、頃合いだと言った。やがて少し増えたとき、まあまあこれで十分だと言った。後に富み豊かになったとき、ま、ご立派と言った。論語 加地伸行

  

 「荊」が財産に執着していなかったとし、身分相応の心得があった、と加地は解説する。

 

富みて有るに、曰わく、苟に美なり

「富と地位」を、孔子はどう考えていたかと「論語と算盤」の著者渋沢栄一は問う。

 そして、「孔子が富と地位を嫌っていた」とするのは間違いであるといったことを思い出せる文章である。

 

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 真に、孔子が富を忌み嫌っているなら、かりそめにも「美」という表現はないように思ったりする。

 「合」、「完」、そして、「美」、言い得て妙なのかもしれない。

 「美」の解釈が問題になるが。 

 

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 「述而第七」15では、「不義にして富み且つ貴きは、我に於いては浮雲の如し」と孔子はいった。 

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  渋沢がいうように、「孔子もまた自ら進んで、まっとうな生き方にかなった富や地位、手柄や名声を手に入れようとしていた」ということともいえそうだ。

 

(参考文献)  

論語 増補版 (講談社学術文庫)

論語 増補版 (講談社学術文庫)

 
論語 (ちくま文庫)

論語 (ちくま文庫)

  • 作者:桑原 武夫
  • 発売日: 1985/12/01
  • メディア: 文庫