子曰わく、仁 遠からんや。我 仁を欲すれば、斯(すなわ)ち仁に至る。(「述而第七」29)
(解説)
「孔子の教え。仁は難しい徳であろうか。己がそうでありたいと志せば、ただちにその境地に達するのだ。」(論語 加地伸行)
桑原の解説。
仁は最高の徳だが、だからといって決して高遠無比、手の届かないところにあるものではないという。自分が本気でそれを欲求しさえすれば、仁はたちまちここに現前する。
仁は遠い、しかし、それだけにそれを欲求する熱意が強ければ、たちまちに現前するのである。文学者である桑原は、「欲」を強くよみたいという。また、「斯」を「ここに」とよみたいという。そうすることで、「遠い」という言葉のあとに目の前の近接感が出てくる。孔子が弟子を励まして、仁に至らしめようとした名文句であるという。
仁は至難でもなければ安易でもない。それを現前せしめるのは生体の意志の志の問題だとするのだ。
(参考文献)