「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

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【人の生くるや、直たれ。之 罔くして生くるは、幸いにして免るるのみ】 Vol.140

 

子曰わく、人の生くるや、直たれ。之 罔(な)くして生くるは、幸いにして免(まぬか)るるのみ。(「雍也第六」 19)

  

(解説)

孔子の教え。人間は生きてゆくとき正直であれ。それがなくて生きたとすれば、それは幸運にも失敗を免れただけのことだ。論語 加地伸行

    

 桑原の解説

 人間の生きていくのは本来まっすぐなものである。蘇東坡(そとうば)のいうように、木が曲るのはおさえるものがあるからである、おさえなければまっすぐに成長しない木はない、人間もまた同じだ、ということであろうという。

 ところが、現実には曲った、つまり邪まなことをして生きている人間がいる。これは本来、刑罰をうけて死ぬべきはずなのだが、偶然にあるいは僥倖によって生きているだけのことである。「免」という字は、きわめて強く「刑戮を免れる」という意味だと徂徠はいうという。

 古注では、「罔(な)くして」を「罔(いつわ)りて」と読み、「直」を正直ととるという。 

 

 之 罔くして生くるは、幸いにして免るるのみ

 桑原は、新注、古注、両方を引き合いに出し、解説するが、「之 罔くして生くるは、幸いにして免るるのみ」については、どちらも同じ解説で、不正直なやつは本来殺されても仕方がないのだが、僥倖でお目こぼしにあずかっているだけだという。

 「免」の言葉を意味することによるのだろうが、少々過激な言葉遣いのような気もする。新古どちらでも、当時はそこまで「直」が重要視されていたということなのだろうか。

 

 加地の「それがなくて生きたとすれば、それは幸運にも失敗を免れただけのことだ」と解説した方が現代向きかもしれない。

  

(参考文献)  

論語 増補版 (講談社学術文庫)

論語 増補版 (講談社学術文庫)

  
論語 (ちくま文庫)

論語 (ちくま文庫)

  • 作者:桑原 武夫
  • 発売日: 1985/12/01
  • メディア: 文庫