「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

【敢えて後るるに非ず。馬 進まざるなり】 Vol.136

 

子曰わく、孟之反(もうしはん)伐(ほこ)らず。奔(はし)りて殿(しんがり)す。将(まさ)に門に入らんとするとき、其の馬に策(むちう)ちて曰わく、敢えて後るるに非ず。馬 進まざるなり、と。(「雍也第六」15)

  

(解説)

孔子の教え。孟之反は自慢をしない人であった。敗走したとき、殿軍の長の役割を果たした。軍門に入ろうとするとき、馬に鞭をあてて急がせ、こう言ったという。「自分から殿をしたわけではござらぬ。馬が進みませんでな」と。」論語 加地伸行

    

桑原の解説。

 孟之反は魯の大夫、孟孫氏の一族。勇士として知られていたという。

 前484年、魯が斉の国と戦って敗北し、魯軍は曲阜城内に逃げ帰ったが、そのさい殿(しんがり)をつとめたのが、この孟之反であったという。

 孔子は、孟之反が殿を見事につとめて誇らぬ姿を見て、功を誇らぬゆかしい情景を記録しようとしたという。

 これに反し仁斎は、これは本当にこの勇士の馬が早く走らなかったからで、彼は嘘をつくような男ではなく、また孔子がそんな嘘をほめるはずがないといったのは、平素のよみの深さを裏切るものだと桑原はいう。それでは静かに馬に鞭を加えるその情景の美しさを、まったく解しないことになると指摘する。

 

(参考文献)  

論語 増補版 (講談社学術文庫)

論語 増補版 (講談社学術文庫)

  
論語 (ちくま文庫)

論語 (ちくま文庫)

  • 作者:桑原 武夫
  • 発売日: 1985/12/01
  • メディア: 文庫