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コロナ時代の投資【君子は急に周くして富めるに継がず】 Vol.125

 

子華(しか)斉(せい)に使いす。冉子(ぜんし)其の母の為に粟(ぞく)を請う。子曰わく、之を釜(ふ)を与えよ、と。益さんことを請う。曰わく、之に庾(ゆ)を与えよ、と。冉子 之に粟五秉(へい)を与う。

子曰わく、赤(せき)の斉に適(ゆ)くや、肥馬(ひば)に乗り、軽裘(けいきゅう)を衣(き)る。吾 之を聞けり、君子は急に周(あまね)くして富めるに継がず、と。(「雍也第六」4)

  

(解説)

「子華が斉国に使いしたことがあった。すると冉先生が公西赤の母に留守見舞いとして粟をお贈りくださいとお願いした。孔子は「釜ほどを遣わせ」とおっしゃったが、冉先生は、もう少し増やしてくださいとお願いした。すると孔子は「庾ほどを贈れ」と指示された。しかし、冉先生は五秉を贈った。

孔子は言った。「赤が斉国に使いしたとき、立派な馬に乗り、軽裘を着て行った。私はこう学んでおる。「君子 教養人は、相手が急場で困っているときには手厚く援助し、豊かであるときにはわざわざ継ぎ足すようなことはしないものだ」と。」論語 加地伸行

 

 

 「子華」とは「公西赤」のこと。字名が「子華」。「公西華」とも言われ、孔子の42歳年少の弟子。衣冠束帯の礼装をして朝廷で賓客と応対することが立派にできるという。 

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 「冉子」とは「冉求」の尊称。「冉求」、「冉有」とも呼ばれ、孔子より29歳年少の弟子。字名は子有。政治的手腕があり、季子の宰となった。孔門十哲の一人と言われる

 

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  コロナが世界中を震撼させている。人類はあまりにも無防備だった。あっという間に、感染が拡大し、人々は引き籠り、移動しなくなった。急速に経済が悪化した反面、地球は浄化されたかのように、元の美しさを取り戻したりした。

 ウィズコロナ、コロナとの共生が叫ばれ、新しい日常、新しい生活様式が浸透し始めている。 

「君子は急に周くして富めるに継がず」

 生活の危急にある者には援助するが、富める者に対してさらに継ぎ足すことはしないものだという。コロナ渦にあってはこの精神が必要なのだろう。また、そう振舞えるからこそ、君子ともいえるのだろう。

 

 

 テクノロジーが新しい時代を切り拓き、もしかしたら、サスティナビリティ、持続可能な社会の実現に大きく貢献してくれるものと信じられていた。

 テクノロジーの新興企業に資金が集まった。期待が大きく膨らんだ。しかし、現実にはなかなか事業化がうまく進まず、赤字を垂れ流していた。そこに、コロナが直撃した。活動が急速に弱まり、その結果、地球が浄化し始めたようにも見える。

 そして、「ビジョンファンド」は1.9兆円にも及ぶ損失を出したという。

  テクノロジー企業への投資とは何だったのだろうか。 

「君子は急に周くして富めるに継がず」

 ビジョンファンドは、投資先を間違えていたということだろうか。 

「君子(教養人)は、相手が急場で困っているときには手厚く援助し、豊かであるときにはわざわざ継ぎ足すようなことはしないものだ」

 君子と呼べる行為ではなかったと言えるのかもしれない。

  

(参考文献)  

論語 増補版 (講談社学術文庫)

論語 増補版 (講談社学術文庫)

  
論語 (ちくま文庫)

論語 (ちくま文庫)

  • 作者:桑原 武夫
  • 発売日: 1985/12/01
  • メディア: 文庫