2024年度上半期に、1万円紙幣が刷新される。その新しい1万円札の顔に渋沢栄一が採用される。2021年放送の大河ドラマ「青天を衝(つ)け」の主人公は渋沢栄一。日本資本主義の父がどんなストーリ展開で描かれるか楽しみでもある。
1916年、その渋沢栄一の言葉を編んだものと言われる「論語と算盤」が出版となった。この本は、「利潤と道徳の調和」を説いている。
「論語と算盤」の最初の章にはこんな件がある。
「実業(ビジネス)とは、多くの人にモノが行きわたるようにするなりわいなのだ。
これが完全にならないと国の富は形にならない。
国の富みをなす根源は何かといえば、社会の基本的な道徳を基盤とした正しい素性の富なのだ。
そうでなければ、
その富は完全に永続することはできない」
ここ最近、SDGsとの言葉を耳にする機会が増えた。
2015年、国連で「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択された。
このアジェンダでは、人間、地球及び繁栄のための行動計画として、宣言および目標をかかげた。
この目標が、「持続可能な開発目標(SDGs)」と言われ、17の目標と169のターゲットからなる。
すべての人々の人権を実現し、ジェンダー平等とすべての女性と女児の能力強化を達成することを目指す...
これらの目標及びターゲットは、統合され不可分のものであり、持続可能な開発の三側面、すなわち経済、社会及び環境の三側面を調和させるものである。
国連のグテーレス事務総長は、2019年のSDGsサミットで、SDGsは「公正なグローバル化を目指す」と語った。
アントニオ・グテーレス国連事務総長、SDGサミットでの冒頭スピーチ(2019年9月24日)
渋沢は、「利潤と道徳の調和」を説く。その道徳をもとにした富が国や社会の持続性をもたらすという。道徳とは元来、普遍的なものであろう。本質的なところで変化はなくとも、その解釈は時代時代で変容するのかもしれない。
さて、現代の道徳とは何であろうか。
論語の中心的な教えに「仁」がある。慈しみの心、忠恕、利他の心とでも解釈するのだろうか。
「義」ばかりで、「仁」がなければ、何か、ぎすぎすとし温かみのない社会になってしまう。
国連が示したSDGsでも、単に経済的な持続可能な社会を求めるのでなく、社会、環境を包含、調和して、公正かつ包摂的な社会の実現を目指すとしている。
そう思うと、SDGsと渋沢の「論語と算盤」の共通性を感じる。何か相通ずるものがありそうだ。
現代社会を「論語」ばかりでなく、そうした概念を取り入れながら読み解いていきたい。そんなことからでも、持続可能な社会の実現に貢献できればと思う。