「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

カルロス・ゴーンさんどこで道を外れたの?【道くに徳を以てし、斉うるに礼を以てすれば、恥有りて且つ格し。】 Vol.24

  

子曰わく、之を道(みちび)くに政を以てし、之を斉(ととの)うるに刑を以てすれば、民免(まねか)れて恥無し。之を道くに徳を以てし、之を斉うるに礼を以てすれば、恥有りて且つ格(ただ)し。(「為政第二」3)

  

(意味)

「行政を法制のみに依ったり、治安に刑罰のみを用いたりするのでは、民はその法制や刑罰にひっかかりさえしなければ何をしても大丈夫だとして、そのように振舞ってなんの恥ずるところもない。(しかし、その逆に)行政を道徳に基づき、治安に世の規範を第一とすれば、心から不善を恥じて正しくなる。」(論語 加地伸行

 

 昨今の世界情勢を見渡すと、米中の関係悪化に経済の減速懸念、アマゾンの森林火災に温暖化などの環境問題、香港デモ、イラン情勢など問題を挙げれば数限りないとの感じがします。国内に目を移しても、日韓問題、消費税、少し遡れば、ゴーンさん事件、森加計問題とどこもかしこも問題だらけです。

 論語の次のことばを照らして考えれば、理想となる徳の政治からほど遠く、2000年もの前から同じ政治課題を抱えたままという感じなのでしょうか。政治に進歩がないということなのか、それとも、それを司る人間に進歩がないのかは定かではありませんが。

 ビジネス界でも政治と同じなようなことは実際に起きている。大きなところでは、GAFAによる国際的な税金逃れ、カルロス・ゴーンさんの問題に始まり、仕事における不祥事は日常茶飯事、よくニュースを賑わします。経営においても、徳による指導が薄れてしまっているのでしょうか。

 その中で、カルロス・ゴーンさんの事件はたいへんショッキングでした。多少荒療法的には見えましたが、日産を復活させたその手腕に驚嘆していました。特に、毎年の労使交渉で、組合要求の賃上げに満額回答する姿には感動していました。彼の著作「ルネッサンス」を読み、彼の経営スタイルも学んでいました。

 

違いを尊重する 相手を尊重することからはじめなければならない

 日産と日産の人々に敬意を持ってほしい。そして、日本人は何故違うやり方をするのかを時間をかけて考えて欲しいと伝えた。もちろん、これには忍耐が必要だが、相違点を分析し理解して、そこから学ぶことができれば、文化的に豊かになることができる。文化的に豊かになれば、革新的なマネジメントや改善が誕生し、誰もが恩恵に浴することができる

どちらかが自分のやり方が優れていると考えたり、単一文化思考に囚われていたら、プロジェクトの離陸はあり得なかった。・・・ (出所:ルネッサンス カルロス・ゴーン) 

ルネッサンス ― 再生への挑戦

ルネッサンス ― 再生への挑戦

 

 

 どこかで道を外れる心の変化や誘惑があったのでしょうか。それとも単に長期政権の弊害なのでしょうか。ビジネスの世界も政治と同じなのか。

 そうあってはならないと思いますが。

 

(参考文献) 

論語 増補版 (講談社学術文庫)

論語 増補版 (講談社学術文庫)