「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

時の移ろい、変わる街の風景、アップデートされる企業理念

 

 渋谷を代表する商業施設 東急百貨店本店が閉店となり、約55年の歴史に幕を閉じました。時代は移ろい、社会は変わりゆくものと改めて感じます。

 かつて華やいだ百貨店、そのビルは取り壊され、そこに新たな複合施設が建設されるそうです。新陳代謝することで、その時代に適合できるのでしょう。

 時代が進めば技術もが進歩し、それによって最新ものが建造され、またそれで街も華やいでいくのでしょう。

 

 

 長く停滞を続け、経営苦境にあるパナソニックがその危機から脱しつつあるようだといいます。

 パナソニックホールディングスの社長に昨年就任した楠見雄規氏は、創業者松下幸之助氏の理念に立ち返った上で、1964年に制定された経営基本方針を約60年ぶりに改定したといいます。

 社員一人ひとりが力を発揮できる会社へと立て直しを図ろうとしているそうです。

松下幸之助水道哲学

 創業者幸之助は「水道哲学」を提唱し、「全ての物資を水道の水のように価格を安くして社会を豊かにする」とし、「25年からなる1節を10回繰り返し250年で世の中を楽土にする」という「250年計画」を立案したといいます。

「250年計画がつくられたのは今から90年前。では、これから160年後の世界はどうなるのだろうか」。そう考えた楠見に浮かんだのは、資源不足など新たな貧しさにつながりかねない地球環境問題を解決しなければならない、ということだった。

子孫に物心とも豊かな社会を残すため、それこそが使命だとの思いを強めた。(出所:日経ビジネス

 幸之助の理念と現代の課題を掛け合わせ、そこから新たなパナソニックHDの取り組むべき課題を見出したといいます。

パナソニックの歴代トップ、松下幸之助と終わらぬ対話: 日本経済新聞

 記事によれば、幸之助の「産業報国の精神」を楠見は、「私たちの使命は(略)地球環境との調和に貢献することです」に置き換えたといいます。また、経営幹部に「環境投資は短期的に利益と相反するなどとネガティブに考えている事業部長は退場してくれ」ともいったそうです。

 

 

 企業もまた新陳代謝することで、その時代に適合し、次のステップに進むことができるということなのかもしれません。

論語に学ぶ

故(ふる)きを温めて新しきを知る、以って師と為るべし。 (「為政第二」11) 

「温故知新」、 過去の伝統を冷えきったまま固守するのではなく、それを現代の火にかけて新しい味わいを問いなおすと意味します。

「永遠の真理の今日的意味をさぐる」、こうした知的訓練を重ねることによって、目前の複雑で混沌とした現実を、鋭くまた筋道をたててとらえることができるということでもあるといいます。

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 古くからの伝えを大切にしながらも、それを墨守するのではなく、そこから新しい知識を得て行くことができれば、人を教える師となることができるということなのでしょう。リーダーに求められる資質のような気もします。

 

 

公務

 首相の欧米歴訪時に同行した長男の翔太郎政務秘書官が首相のプライベートな土産を購入していたことについて、国会 衆院予算委員会で質疑応答があったといいます。

ポケットマネーで全大臣に土産、購入も秘書官公務に含まれ得る=首相 | ロイター

「それは公務か」との質問に対し、首相は「総理の土産を買うことを政務秘書官が対応するのは現実としてあると思う」と答弁し、『公務』であると述べたといいます。

 どうなのでしょうか。首相の感覚にずれがないのかと心配になります。防衛政策や原発政策においても同じなのかもしれません。

 党の伝統をただ墨守するのではなく、時代にあったものへと変化、アップデートさせるべきなのでしょう。そうできていなから、世界から取り残される状況が続くのではないでしょうか。

 

【世相を表す事件】なぜ、ここまで不正や不祥事がはびこるようになってしまったのだろうか

 

 今日の世相を反映するような事件が続いています。広域強盗事件、宗教団体の問題、五輪汚職や企業での不正や不祥事などなど。

 そればかりではありません。自衛隊においてはハラスメント問題が発覚、その後の調査で、パワハラやセクハラなど約1400件の被害申告があったといいます。これが、国を守るはずの自衛隊の実態なのでしょうか。

 こわい話です。規律もモラルなくして、国を守ることができるのでしょうか。

元自衛官の五ノ井里奈さん、性暴力の加害者や国を提訴 「できればやりたくなかった」裁判へ踏み切った理由:東京新聞 TOKYO Web

 国と加害者の元隊員5人を相手取り、セクハラの被害者が賠償請求の訴えを起こしたそうです。被害を訴えた際に適切な調査をしなかった国の責任などを問うといいます。

 

 

 提訴後に記者会見した被害者は「再発防止につなげ、自衛隊が正義感を持った組織になってほしい」と求めたそうです。

性被害を訴えた際、上司にあたる中隊長は調査を行おうとはしなかった。「上に立つ立場の人は隠蔽などせず、正義感を持った対応をしてほしい。一人一人が大切にされる組織になってほしい」(出所:JIJI.com)

 企業の不祥事

 企業による「談合」も未だ繰り返されています。

かつて銀行業界は談合の巣窟だった 今になって思い起こすこと【江上剛コラム】:時事ドットコム

談合なんていうことが、コンプライアンス意識が高まり、企業取引における透明性確保が徹底される世の中で、いまだに行われていることに驚いた。談合を「昭和の犯罪」と表現している記事を読んだが、まさに古くて新しい犯罪なのだろう。(出所:JIJI.com)

 電力料金が恐ろしく高騰する中、電力会社の談合事件なども発覚しています。談合に参加した電力会社に巨額の課徴金が科せられたというニュースもありました。また、五輪汚職の捜査は続き、テストマッチにおける談合疑惑が取り沙汰されています。

「最も費用を削減するイベントにすると大見えを切っていたのに、そうした覚悟も仕組みも全くなかったことに裏切られた思いだ。税金の無駄遣いであり、特捜部には徹底した捜査を期待したい」と作家の江上剛氏が指摘します。

 

 

関係者が罪を認めているわけではないので軽々なことは言えないが、巨額な費用を使う国家的イベントの背後で、自分だけはうまい汁を吸いたいという欲望がうごめいていたことに、多くの国民は驚くというより「やっぱりね」という感想を抱いたのではないだろうか。(出所:JIJI.com)

 組織委員会は大会を失敗させるわけにはいかないとの不安に駆られ、経験豊かな企業にすがったりしたのでしょうか。そこから巨大な欲望がうごめき始めたということなのでしょうか。

法治国家

 国会で予算委員会での審議が始まりました。いきなりあの宗教団体の会合に頻繁に参加していた与党幹部が質問に立ち待ちました。うんざり、つくづくいやになります。

 法にさえ触れなければ何も問題ないと言わんばかりに、もうしませんといって反省すれば、それでおしまいなのでしょうか。何を発言しても、どうにも疑わしく、胡散臭く感じてしまいます。立法に携わる議員たちが自らのことだけを考えて法整備しているのではないかと思えます。

 もう過去になってしまいましたが、総理大臣が国会でもし私が法に触れているのなら....と発言しました。その後ゴタゴタが続き、忖度、改竄、隠蔽、そんなことが俎上し、議論されました。しかし、うやむやのまま終わってしまったようです。

 一方、広域強盗事件でも、指示役とみられる人物が法を悪用して、強制送還を免れようとしているようだといいます。これが法治国家なのでしょうか。

 

 

論語に学ぶ

孰(たれ)か微生高(びせいこう)を直と謂う。或るひと醯(けい)を乞いたるに、諸(これ)を其の鄰(となり)に乞いて、之に与えたり。(「公冶長第五」24)

 誰が微生高をまっすぐな人と言ったのであろう。ある人が微生高に酢を借りに来たことがあった。そのとき、無いなら無いと素直に言えばよいものをわざわざ自分の隣の家から酢を借りてきて、その人に与えたといいます。そこまでして、それが「直」、まっすぐということなのかと孔子は批判したといいます。

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 別な見方があるといいます。「自分のところに酢がなければ隣から借りて融通してあげる、それがどこが悪いことなのか」。「隣の酢を自分のもののような顔をして融通したところで、立派ではないにしても、何も悪いことではない」、孔子は微生高が剛直で融通の利かない男ではなく、いい人ですよといっているのだといいます。

 微生高の行為は、偽善や虚栄だったのか、それとも他者を思いやる気持ちから生じたことだったのか。それはわかりません。

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 どこまで素直に国、国民を第一に思い、政治が行われているのか、それがわからなくなることが増えているようです。政府、そして議員たちにこうした自覚はあるのでしょうか。これ以上社会が悪化していくことを食い止めなければなりません。

 

「参考文書」

女性隊員にセクハラ 陸士長を懲戒処分 陸自下志津駐屯地 | 千葉日報オンライン

 

募る不満、改まらない首相の言行不一致、「異次元のはぐらかし」との声も

 

 良い時もあれば悪い時もある。そして再び良い時がやって来る。こんな繰り返しで、進歩があるものです。社会が一定であることはなく、常に変化しているのだから、それに合わせて上手に変化できない、そんな時期を悪い時というのでしょう。こうした時間が長く続けば、気持ちがふさぎ込んでいくばかりです。

 日本周辺が物騒になったり、経済環境が悪化したりするのも、周りで生じる変化に巻き込まれるばかりで、その変化に合わせて対応することを怠ったことによって生じるのでしょう。その変化に対抗しようとするのなら、それ以上の優れた統治能力とそれを支える智慧がなければ対抗できようもありません。そうした資質のない人が治める国が衰退することは歴史において何度も繰り返されてきました。

 

 

 通常国会が各党の代表質問で始まりましたが、相変わらず首相の答弁は質問と噛み合わず、自らの言葉に反しているところを批判されているといいます。

岸田首相「正々堂々」に疑問符 防衛・原発、正面から答えず:時事ドットコム

岸田文雄首相は施政方針演説で「国会の場で正々堂々議論する」と宣言したが、質問とかみ合わない答弁も目立ち、野党からは「『正々堂々』と真逆だ」(立憲民主党泉健太代表)と批判が上がった。(出所:JIJI.com)

「政権の決定を踏まえ、与野党と活発な国会論戦を行い、それによって国民への丁寧な説明も行う」と述べる首相の答弁は、丁寧さを欠き、論戦すらになっていないということでしょうか。

 こうした言行不一致も、自覚のなさからなのでしょうか。これでは統治能力に疑問符が付いてもおかしくないのでしょう。

「政治の大部分は管理的・技術的になり、政治が大きな道徳的問題や正義の問題に直接的に真剣に取り組まない傾向がある」とは、政治哲学者のマイケル・サンデル教授の言葉、「世論は政治に不満を抱き、選挙民はより大きな意味と目的を持つ公共的な生活を渇望している」といいます。

 国民に便益を提供するのも国の役割ではないでしょうか。そうした本質的な議論にならずにして、手続き論など管理的な話題で紛糾するようであれば、それは無益で終わりかねないのでしょう。

 

 

論語に学ぶ

苟(まこと)に仁に志さば、悪無きなり。(「里仁第四」4)

  江戸期の儒学者伊藤仁斎によれば、「仁に志せば心もちはゆったりとして人を慈しむことになるから、おのずと人から悪まれることがなくなる、世間は公平によく見ている」と意味するそうです。

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 また、この言葉には「ひたすらに仁を志すならば、けっして悪を行なうことはない」との意味もあるといいます。

 逆説的に言えば、人々が政治に不満を抱くのは、国民を慈しむこともなく、また、政治家の態度が「仁」から離れ、その志が別のところにあるように見えてしまうからなのでしょう。  

 世界はより複雑化し、ますます難しい時代になっています。そんな時代を生き抜いていかなければなりません。「仁」を育くむことが求められていそうです。

 

【またも躓く】批判される首相の答弁、ますます薄れそうな信頼

 

 岸田首相の国会での答弁がまた物議を醸しているようです。ますます信頼感が薄れそうです。

岸田首相「育休中の学び直し」答弁に批判 「育児してない人の発想」 | 毎日新聞

 こうしたことが常態化してきていないでしょうか。支持率が回復しないのもわかる気がします。

 今も政権を担う自民党議員たちの発言がこうも批判される現実を目の当たりにすると、野田元首相の安倍氏追悼演説の一節を思い出します。

「あなたがこの国に遺したものは何だったのか」

  何だったのでしょうか、この国の未来が心配になります。

 

 

大転換

安倍元首相でさえできなかったことを、岸田首相は今、実現させようとしている。(出所:JIJI.com)

「大転換」だと記事はいいます。

 そうしたくても、そうできなかった理由があるのに、そうしたことを顧みることなく、ただ猛進しているようにしか見えません。

相変わらずの岸田首相に大化けの可能性 彼はどこまで本気か【コメントライナー】:時事ドットコム

 岸田首相が総理総裁の座を射止めようとしたとき、首相は安倍氏からの禅譲を狙っていたと記事は指摘しています。そして、安倍氏が亡くなると、今度は安倍氏に近い議員たちの支持をつなぎ留めようと必死になったようだといいます。

 しかし、首相がやろうとすることは国民には十分に説明されません。また、国会の論議が始まれば始まるで、問題となります。岸田首相の大転換とは一体、何なのでしょうか。

台湾有事

 あるとすれば、それは「異例の3期目に入った習主席が、4期目を目指す2027年」と、台湾の外交部長が発言したといいます。

【中国ウオッチ】中国の台湾侵攻「2027年の可能性」 外交部長が異例の予測:時事ドットコム

それまでの3期に取り立てて言うほどの業績がなければ、彼は何かの業績もしくはレガシーをつくることを考える必要が出てくるかもしれない。(出所:JIJI.com)

 また、中台双方の政界と交流がある香港親中派の消息筋は 「頼清徳副総統が次の総統になって独立を宣言するといった事態にでもならない限り、侵攻はあり得ない」とコメントしたそうです。

 首相が防衛力強化を訴えると、かなりの確度で有事が近々にあるのかと考えがちですが、現実にあってはどちらの当事国もそれを避けようとしつつ、どちらが優位になるかの駆け引きをただ続けているのではないでしょうか。

「習政権は今後も、中国と距離を置く民進党政権に圧力をかけ続けるとみられるが、その一方で、圧力が過大になって総統選でまた敵に塩を送るような事態は避ける」と、記事は指摘しています。

 

 

「台湾有事は日本有事」とのことばをどこかで聞いたような気がします。首班の座を降り、党の一員となれば、本人がその発言の影響力の大きさを自覚してようがしていまないが、自身の考えを何の制約もなく話すこともできるのでしょう。

論語に学ぶ

道に聴きて塗(みち)に説くは、徳を之れ棄(す)つるなり。(「陽貨第十七」12)

 受け売りをするのは、自分で不道徳となってしまうこととの意味です。

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 彼の方は物事を現実的に考え、現実的に処理できる人だったのではないでしょうか。

 それが世界的にも評価された所以なのかもしれません。ただそれがあまりにも過ぎるところがあって、時に意見の齟齬を生んだのではないでしょうか。

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首相は亡霊に囚われていないでしょうか。

 受け継ぐべきは現実的に考えることのような気がします。そして、齟齬を生じさせないよう政策を調整していくことが求められているのでしょう。

 もう彼の方の時代は終わり、次へと時代は移ろっているのですから。

 

【裸の王様のような首相】国よりも自身の生き残りを優先していないか

 

 首相の長男 岸田翔太郎政務秘書官が、首相外遊中のロンドンやパリで観光していたとの週刊誌報道について、広報のための写真撮影や首相の土産購入が目的だったと木原官房副長官が釈明したといいます。

木原副長官、岸田秘書官の「観光」否定 広報用で撮影、首相の土産購入:時事ドットコム

 また、「個人の観光動機による行動は一切なく、政務秘書官としての公務以外の不適切な行動はなかった」とも説明したそうです。

 政務秘書官として必要な行動だったのでしょうか。心根が知りたいところです。いずれにせよ、この時勢にあって、このニュースを聞いてこころよく思わない人が多いのではないでしょうか。

 

 

 物価の高騰がおさまる気配はなく、賃上げの動向も未だ見通せません。一方で、中小企業の賃上げのためには価格転嫁は不可避といいます。転嫁が進めば、さらなる高騰になることはないのでしょうか。

 いつになったら新しい資本主義の下、成長と分配の好循環が実現できるのでしょうか。

 政策運営がしっかりしていれば不安を感ずることがないのでしょうが、現実がそうなっていないから不安を感じるのでしょう。翔太郎氏の件がその最たる現れのような気がします。

小事に規律正しく臨めない者は、往々にして、大事にも規律正しく臨めない。(ウォーレン・バフェット

裸の王様

 政治ジャーナリストの田崎史郎氏が広島市で「岸田政権の行方」と題して講演したそうです。

「首相は9月に解散・総選挙に打って出る」 政治ジャーナリスト田崎史郎氏の見立て 中国経済クラブ講演会 | 中国新聞デジタル

 記事によれば、田崎氏は首相が「昨年11月上旬に、吹っ切れたとみている」と述べたそうです。

世論調査内閣支持率が9ポイント落ちた。不思議なくらい大きな下げ幅だったが、岸田首相は全然落ち込んでいなかったと周囲から聞く。支持率を毎日気にするのではなく、自分がやろうと思ったことをどんどんやっていく以外ないと腹を固めたのでないか。(出所: 中国新聞デジタル)

 評論家の読みが正しいか否かはわかりませんが、そう思えなくもありません。

 支持率が落ち、支持率回復につながるだろうと思える政策の数を増やせばいい、それでは少々安易すぎないでしょうか。それも、それを独断するようであれば危険極まりありません。

 

 

 田崎氏によれば、賃上げについて経団連の強い後押しで3%半ばくらいになると、官邸は見通しを立て、及第点を得られるだろうとしているといいます。また、少子化問題には首相も強い危機感を持ち、なんとか打開しないといけないとの思いから、「異次元の少子化対策」という言葉を使ったといいます。

経営者が愚劣極まる買収に熱をあげる時、社内の幹部は必ずと言っていいほど、ボスの立場を正当化するのに必要な数字をひねり出している。(ウォーレン・バフェット

「王様が裸だと教えてもらえるのはおとぎ話のだけだ」とバフェットはいいます。

生き残り

  早くも首相は来年の自民党総裁選を考え、衆院解散の時期を探っていると田崎氏は指摘します。

 今年衆院を解散しないと、総裁選は次の総理大臣を決める選挙になってしまうことより、むしろ今年9月頃に解散し、総選挙を実施して、民意を得た総理総裁として来年の総裁選に臨む方が勝ちやすいとの見立てをしています。

 自らひねくり回して出した政策で支持を失いがら、自ら生き残るために、あれこれと立ち回るようであれば、確かに首相は生き残れるのかもしれません。

 しかし、それで日本の衰退に拍車がかかり、国として生き残ることが困難になったとするのならどうするのでしょうか。浅はかとしか言いようがありません。

 

 

 国家の責務に、独立を確保して国民の生命、財産を守るということがあるそうです。こうしたことを根拠にして、防衛論が展開されたりするのでしょう。一理はあるのかもしれませんが、それに以前に、政府の愚策によって国として生き残れなくなったら、元も子もありません。

論語に学ぶ

君子は周して比せず。小人は比して周せず。(「為政第二」14)

 君子 教養人は公平であって偏らず、党や仲間を優先しない。小人 知識人は仲間贔屓があって利害で取り入り、公平さがないと意味します。

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「周」は「あまねし」で、平等、公平。「比」は「ならべる」で、仲間、党派。

君子は教養人、知識人にして、さらに道徳的修養を積んだ人格者といいます。

間違いを認めない者は、周りの人々の不信感を買う(ウォーレン・バフェット

 首相はどんな人物なのでしょうか。

 

「参考文書」

「あんたら金ファミリーか!」岸田の”ドラ息子”翔太郎氏に政界大分裂! 慶應→三井物産の政治素人「未知すぎる実力」(みんかぶマガジン) - Yahoo!ニュース

 

 

【記憶と決断】逡巡したドイツ首相、謙虚さが足りない首相

 

「悪口集め」、ファーストリテイリングの柳井社長のことばです。悪口、つまり批評とか批判は自分を知るのに役立つということのようです。

私たちの商品到達水準を知る上では非常に役立つ。自分たちが送り出した商品の失敗を直視し、研究し、改善する(引用:「一勝九敗」柳井正

 自分に対する批判や批評はこころよいものではありませんが、謙虚になって受け止めることができれば、そこに成長の種があるということなのでしょうか。

 

 

 しかし、国政にあっては、こうした言葉も通用しないのでしょうか。国をより良くしていこうとするはずの政府であるなら、広く意見を求めて、過去の失政を反省し、それを活かせば、数ある国の難問も解決に向かうはずですが、そうならないのがもどかしいです。

ドイツの逡巡

 ドイツが、ウクライナ主力戦車レオパルト2」を供与することを決めたそうです。慎重姿勢であったショルツ首相が方針を転換したといいます。

ドイツが主力戦車を供与決定 米国も提供、欧州安保強化: 日本経済新聞

 ショルツ首相の逡巡、ためらい、決断がつかず、しりごみしてしまう。理解できない訳でもありません。

どの企業や組織にも記憶がある、この記憶が、人々を歩く道をつくる。(引用:「スターバックス再生物語」ハワード・シュルツ

 二度の大戦を経験したドイツが、国内世論を気にかけることは当然のことなのでしょうし、また、それによって自国民を危険にさらすこともできない。そう考えるのも大戦の記憶からのことなのでしょう。

 ただ現実にあってはならない戦争で苦しむ人々がいる、また関係各国からの要請がある。難しい決断です。逡巡すればするほどに、批判の声が耳に届く。

誰かと論争するより、誰かと合意する方がはるかに得になる。(引用:「バフェットの大不況を乗り越える知恵」メアリー・バフェット)

「相手と意見が対立する場合でも、相手の意見に耳を傾け、相手の意見を尊重する。しかし、議論を合意に導いておかなければ、対立相手をリラックスさせ、自分の意見を聞く気にさせることは難しい」と、バフェットはいいます。相手が自分の意見を聞く気になって議論に勝つ一歩になるそうです。

 

 

論語に学ぶ

微子(びし) 之を去り、箕子(きし) 之が奴(ど)と為り、比干(ひかん) 諌(いさ)めて死す。孔子曰わく、殷に三仁有り、と。(「微子第十八」1)

 微子は祖国を去り、箕子は奴隷となり、比干は諫めて死んだ。孔子は「殷王朝には三人の人格者がいた」といいました。

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 微子、箕子、比干は、殷王朝最後の王「紂」に仕えていました。それぞれに諫言していたそうですが、紂は耳を傾けず、これらの忠臣を失ったばかりでなく、国を亡ぼすことになりました。

 自分と合わない意見にも謙虚に耳を傾けなければ、自身の問題を知ることもできず、失敗に向かうということなのでしょうか。

聞く耳

 国会論戦が始まっています。首相には聞く耳があるのでしょうか。

 国を二分するような大切な案件であれば、ことさら対立する相手の意見に耳を傾けるべきではないでしょうか。

 日本にも戦争の記憶があります。また周辺国にも同じような記憶があるはずです。対立する相手の意見を尊重する姿勢があってもいいような気がします。

 そこから共通認識が生まれるのではないでしょうか。

 首相は党内の極端な意見ばかりをごり押しすることがあってはならないのでしょう。それが自滅への道となるのかもしれません。

 

 

 

【台湾有事】世界最大手半導体製造のTSMCのしたたかな戦略

 

 世界最大手の半導体受託製造のTSMC 台湾積体電路製造、この会社は今、地政学リスクの真っ只中にありますが、冷静さを失うことなくこの難しい危機に対応しているといいます。 

TSMCの周到な長期戦略 米国に新工場のワケ(The Economist): 日本経済新聞

 米中対立が深刻化し、特に半導体を巡る対立は冷戦期の「鉄のカーテン」ならぬ「シリコンカーテン」とも呼ばれているそうです。また、対立はこの数カ月間日増しに激しさを増しているともいいます。

 TSMCは最先端の半導体技術を開発し、生産される半導体はアイフォンなどの最先端機器に使用され、また軍事においても必要不可欠なものといいます。まさに火中の会社です。

工場の多くは台湾西岸にあるため、中国が台湾海峡を経て侵略してくる危険に常にさらされている。だが同社がうろたえることはない。(出所:日本経済新聞

 そのかたわら、中国でも大々的に生産を続けています。一方で、米国や日本にも新工場を建設しています。さらに台湾内でも新工場を建設しているともいいます。

 この危機にあっても、周到に、そして、したたかに対処していこうとの現われなのでしょうか。

 

 

決定的な対立を避けるために

TSMCは長期的に考えると地政学上、柔軟な対応をとることがビジネスに有利に働くと考えているようだ。つまり、ビジネスの利益を最優先するために極めて高度な外交も展開しているのだ(出所:日本経済新聞

 リスクに対応するように日米に新工場を建設しつつ、研究開発の大部分と生産能力の約8割は台湾にとどめたままといいます。

 記事は、TSMCが「米中が冷静さを維持し、対立を決定的に深めることはないとみている」といいます。

「それが正しいと判明するかもしれない。しかし、仮に間違っていたとしても、同社は少なくとも長期的な視点からあらゆるリスクに備え始めている」といいます。

 TSMCは政治に翻弄されているのでしょう。一方で、各国政府とのパイプから読み取れる空気感もあったりするのでしょうか。

 白黒を今はっきりとさせるのではなく、半導体で決定的な対立につながらないよう行動していくという覚悟を決めたということなのかもしれません。

 それがビジネスにとっても好都合であるし、また国 台湾を守ることにもなるのでしょう。

 

 

論語に学ぶ

 孔子が、弟子の子路、曾皙(そうせき)、冉有(ぜんゆう)、公西華(こうせいか)に、「もしお前を買おうという人が出てきたとき、何をしようとするのか」と問いかけます。子路は、「もし大国が、他の諸大国との間で切迫した状態にあったとしましょう。それだけではなくて、戦争があり、そこから来た飢饉があるとしましょう。そこの行政を私めが担当して三年に近づくころには、人々を勇気があり節度にかなった生活をするようにさせることができます」と述べたといいます。すると孔子は微笑したそうです。

 子路以外の弟子にも問いかけ、冉求は「小国でありますならば、行政を担当して三年になりますころになれば、人々に安定した生活をさせることができましょう。礼楽を教えるなど教化の方面につきましては、然るべき教養人を求め、その人に任せたいと思います」と答え、公西華は「何ができるというわけではありません。もっと学びたいと思っております。そして、諸侯におきましての祖先の祭祀や会合などのときに、正装を身に着け、君侯のその儀式を担当する官となりたいと思います」と答えます。曾点は政治ではなく、平穏な暮らしを語ります。すると、孔子は大きく溜息をついて「私はお前の気持ちと同じだ」と言ったといいます。

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亦各々其の志を言うのみ、と。曰わく、夫子、何ぞ由を哂(わら)うや、と。曰わく、国を為(おさ)むるには礼を以てす。其の言譲(じょう)ならず。是(こ)の故に之を哂う、と。唯(ただ)求は則ち邦に非ざるか、と。安(いずく)んぞ方六七十、如しくは五六十にして、邦に非ざる者を見ん、と。唯赤は則ち邦に非ざるか、と。宗廟会同、諸侯に非ずして何ぞ。赤や之が小たらば、孰(たれ)か能く之が大たらん、と。(「先進第十一」24)

 「各々が自分の気持ちを述べたまでだ」といい、「国を運営するとなれば、をもってしなければならない。だが、子路のことばには謙譲さがない。それで笑ったのだ」といいます。一方、冉求は小国ならといい、公西華は儀式担当官という。しかし、力量のある公西華がそれで終わるならば、誰が執政となることができようか」といったといいます。

 

 

謙譲さ

 この危機下におけるTSMCの対応の周到さ、したかさを支えているのは、もしかして謙譲さなのかもしれません。

「謙譲」とは、自らへりくだって譲ることであり、ひかえめな態度を取ることと意味します。また、自らを低めることによって相手に敬意を表することの意味もあります。

 こうした「徳」を全うすることが、自らと国の利益につながるということを知っているのかもしれません。

 自らの事業が対立の渦中にあり、選択を間違えれば、それが決定的なことになりかねません。自身の役回りも理解しているのでしょう。

徳とは

 「徳」は人間の道徳卓越性があり、西洋哲学における「美徳」に相当すると、哲学者のマイケル・ジョゼフ・サンデル教授はいいます。

 また、「徳」の獲得によって、はじめて人間は優れた人物となるといいます。また「徳」が統治原理の根幹を形成するのが孔子の教えとも評します。

危機感

 孔子の言葉に登場する子路と岸田首相がだぶってしまいます。謙譲さの欠如が共通しているところなのかもしれません。

 子路は後々、衛の国で政治を行うようになりますが、内乱に巻き込まれ戦死することになります。優れた政治の才はあるとされますが、勇気に過ぎるところがあり、それを制御すべきと孔子は何度も諭します。しかし、子路はそれを正すことができなかったようです。子路が「徳」の有用性をもっと早く理解できていれば、悲劇的な結末はなかったのかもしれません。

 歴史に「if」はありませんが、こうしたことから、現代を生きる私たちは「学び」を得なければならないのでしょう。

 岸田政権の日本が危ういのではないかと感じる所以でもあるのです。

 

「参考文書」