「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

【気になる日銀の動向】今後の金利は後任人事次第なのか

 

 日銀が政策決定会合で、政策修正に動くのかが焦点となっているといいます。また黒田総裁の任期も近づき、後任人事に注目が集まっているようです。

日銀正副総裁人事案、2月10日に国会提示で政府調整=関係筋 | ロイター

 これまで通りの量的緩和を維持していくのか、それともタカ派色の強い人物が選ばれることになるのか、いずれにせよ、選ばれし人は、火中の栗を拾いに行くようなものではないでしょうか。最適、最善を選択して欲しいものです。

 

 

異次元緩和の10年の評価は

 この10年余り「インフレ目標政策」が継続されてきましたが、この政策への評価によっても選択は変わるのかもしれません。

 政策の効果はあったのか、それとも新たな「失われた10年」だったのか、どのような評価になるのでしょうか。

インフレ目標政策の10年 | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)

 何のために、日銀の政策があるのだろうかと考えます。景気が良くなって、人心が一新し、将来不安の緩和につながるのが理想なのかもしれません。

「慎重を期して機会を逸失することこそが「失敗」となる」といいます。

「リスクを犯さないこと」の機会費用の方が失敗のコストより大きくなるということを論拠にしているようです。

 リスクを恐れて、政策を転換させることを躊躇い、それによる機会損失がどれだけあったのかという評価があってもいいのかもしれません。

論語に学ぶ

君子は義に喩(さと)り、小人は利に喩る。(「里仁第四」16)

「君子」教養人は道理を理解し、「小人」知識人は損得を理解すると意味します。

dsupplying.hatenadiary.jp

 知識人が、経済の損得だけを論じているようでは、人心が変わることはないのかもしれません。道理をわきまえて、ことに対応しなければ、景気の「気」、人々の心に変化は生まれないのでしょう。それができるのが、「君子」教養をもった人ということでしょうか。

 

 

「正解」のない時代に求められること

オールドタイプは常に「正解」を求めたがるが、しかし、世の中は必ずしも正解が生き残るわけではない。

ロジックは逆で「生き残ったもの」が「正しい」のだ。であれば、データと論理を積み上げて正解を求めるよりも、多様な取り組みを通じて「生き残りに賭ける」ほうがスジが良いということになる。(出所:ダイヤモンド・オンライン)

  インフレターゲット、その目標を定めたがゆえに、その未達が続けば、その解決のための「正解」が気になるようになるのかもしれません。色々な施策は打ってみるものの、それが似たようなものであれば、同じような効果しか現れないのは当然なことのように思われます。

 そもそも何のための目標だったのかと問わなければ、その意義は薄れ、どんどん苦しい状況になっていくのではないのでしょうか。

人選

 ある意味で、人の目利きほどあてにならないものはないのかもしれません。そこに何らかの忖度が入ればなおさらのことです。その人に問題を解決する能力があるか否かは、そんな簡単に見分けがつくものではないのでしょう。

 さて政府は日銀総裁の後任人事でどんな人選となるのでしょうか。

 

「参考文書」

【山口周】が選ぶ「コロナ後の世界をしなやかに生きるために読んでおきたい20冊」 | DIAMOND愛読者クラブ | ダイヤモンド・オンライン

 

【円高と株安】転じる市場動向、日銀も政府も何もしない方がよいのではないか

 

 日本がまるで世界のリスクの中心地になっていないかと感じます。政府はウクライナ侵攻、米中対立に乗じて、東アジアの地政学リスクを高めようとしているようです。

 日銀が先月、YCC イールドカーブコントロール(長短金利操作)政策を修正し、市場関係者に動揺が広がっているそうです。10年近くに及ぶ日銀の異次元緩和がグローバル市場の不確実性の震源地になっているといいます。

「最後の一手」黒田日銀、YCC撤廃とETF再強化か: 日本経済新聞

 足元では国債の利回りが0.5%を超えるようになり、円高に動き、株価は下落しています。日銀の金融政策決定会合に注目が集まっているようです。

実態にそぐわない長期金利の水準を強引に維持しようとする、長短金利操作の破綻が刻一刻と近づいていると多くの市場参加者がみている。市場に嵐が迫っている。(出所:日本経済新聞

 

 

増大するリスク、募る不安に不満

 政府や日銀が余計なことを行うがゆえに、余計な仕事が増え、それが起点となって、リスクが増大し、また、不安や不満が募るのではないでしょうか。

「パンドラの箱」開けてしまった日銀、市場はさらなる政策修正を警戒 - Bloomberg

前月の日銀の政策修正は、むしろ市場機能を悪化させている。さらなる修正観測による金利上昇圧力に対して、日銀は市場の流動性を犠牲にしながらも、金利上限を守るために国債買い入れを増やさざるを得なくなっているためだ。(出所:ブルームバーグ

論語に学ぶ

「述べて作らず、信じて、古(いにしえ)を好む」と論語「述而第七」1にあります。

 祖述、昔からあることを伝えるが創作はしない。古典や古制、古道を好むと意味します。

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 孔子は自分の方法をのべているだけであって、その方法によって生れた彼自身の仕事の中にどのような新しさがあるかは、私たちが発見すべきことであると桑原武夫は解説します。 

 古いものを精根こめて学びとろうとするうちに、もし当人に独異の才能があれば、それは必ず表にあらわれるとし、みだりに幼稚な「独創性」をあわてて発揮しようとはしないことでもあるといいます。

 

 

「斬新」、「異次元」、「サプライズ」、そんなことを求めること自体が幼稚な「独創性」への憧れの現れなのかもしれません。

怠惰のススメ

「仕事はよいものだという信念が、恐ろしく多くの害を引き起こしている」、

 バートランド・ラッセル著「怠惰への讃歌」の冒頭にそうあるそうです。「教養のない人はヒマを有意義に過ごせないので、意味のない仕事をやろうとしてしまう」と、山口周氏が解説しています。

労働生産性が向上して、それでも同じように働けば、過剰な生産と失業が生まれる」とは、鋭い指摘かもしれません。

  効率化の仕事をしていると、実は仕事をなくそうとするのが仕事ではないかと錯覚することがあります。合点のいく言葉です。

 政府も日銀も良かれと思ってするのでしょうが、思い切って何もしないのも手なのかもしれません。その方が自然におさまるところにおさまっていくのではないでしょうか。

 余計なことを閣議決定しごり押しするのではなく、国会で国としての「あるべき姿」を永遠と論議することの方が有意義なことになるのかもしれません。

 

「参考文書」

【山口周】が選ぶ「コロナ後の世界をしなやかに生きるために読んでおきたい20冊」 | DIAMOND愛読者クラブ | ダイヤモンド・オンライン

 

【V字回復した鳥貴族】利他の精神を活かした経営、徹底した経費管理

 

 焼き鳥チェーン大手の鳥貴族がコロナ禍にあって、V字回復を果たし、22年8~10月期の連結決算が、前年同期の17億円の赤字から黒字転換し、大きく収益が改善したそうです。

鳥貴族が「稲盛和夫の経営哲学」でやっと理解した、飲食店が儲からない根本理由 | 「超一流」の流儀 | ダイヤモンド・オンライン

 記事によれば、トリキは、故稲盛和夫氏が推奨した「アメーバ経営」に取り組んだことが功を奏したといいます。

 

 

アメーバ経営と何か、そこから得られる利益

アメーバ経営」とは、企業の人員を6~7人の小集団(アメーバ)に組織し、アメーバごとに「時間当たり採算=(売り上げ-経費)÷労働時間」を算出し、この最大化を図る経営手法といいます。

 また、「時間当たり採算」の目標値を月次、年次で管理し、その達成を目指すそうです。

 アメーバは、構成メンバーの数が少なく、また成果が数字にすぐに表れるので、当事者意識を引き出しやすいとのメリットがあるといいます。

外食企業であれば、店舗ごとに売り上げの最大化、コストの最小化を図るわけだ。店の運営にどのようなコストがかかっているかを細かく項目に分け、その一つ一つの項目について店舗スタッフ全員で知恵を出し合って改善に取り込むことになる。(出所: ダイヤモンド・オンライン)

 記事は、外食産業における適用例を説明しています。

 一方で、一般的なケースにおいては、雇われ店長、社員スタッフが飲食店の管理をするケースでは、日々の業務に忙殺されることが多く、コスト管理といっても材料費と人件費にしか目がいかなくなるのが飲食店の常だといいます。また、水が出しっぱなしになっていても、必要以上の温度設定になっていても、気にするケースは少ないのではないかと指摘、しかし、アメーバ経営はそれを許さないといいます。

 これが外食産業の実態なのでしょうか。これでは放漫経営と言わざるを得ないような気がします。

直営全店で毎月1万円の経費を削減するだけで年間4000万円を超える利益を上乗せできますから。実際に細かな取組みの積み重ねで、備品コストは全社で年間1億円を削減できた(出所: ダイヤモンド・オンライン)

 トリキはアメーバ経営を導入することによって経費管理が適正に実行されるようになったようです。

 

 

トリキウェイ

 鳥貴族は、働く全員が幸せになってほしいとの願いから、「トリキウェイ」という共通の価値観をつくったそうです。

TORIKIZOKU 新卒採用サイト(トリキウェイ)

「正しい人間」「利他の精神(他人の繁栄を計らずして、己の繁栄はない)」「善=幸福」など9項目がならびます。

 また「利他の精神」は以下のように説明しています。

自分のこと、自己の利益を優先する人間には人も集まらず、協力者も現れない。仕事においても同様で、利他の精神は商売の根本でもある。最初に利益優先で考えるのではなく、まず初めにお客様の立場に立ちお客様の喜びを優先することで、お客様に満足して頂けるようになる。(引用:トリキウェイ)

 価値基準が明確になると、仕事が洗練されてくるのでしょうか。

 鳥貴族の大倉社長は、自社の強みを、「居酒屋の多くは『総合居酒屋』として様々な食材を扱っていますが、当社は鶏肉に絞った日本一のチェーンとして強い調達網を構築できている」といい、ユニクロのような製造小売業 SPAに近い業態と説明しているそうです。

コスパの良さ」、こうした他社との差別化も「利他の精神」があって、結実したのでしょうか。

 

 

論語に学ぶ

禹(う)は吾 間然(かんぜん)すること無し。飲食を菲(うす)くして、孝を鬼神に致し、衣服を悪しくして、美を黻冕(ふつべん)に致し、宮室を卑(ひく)くして、力を溝洫(こうきょく)に尽くす。禹は吾 間然すること無し。(「泰伯第八」21)

 夏王朝創始者である「禹」について、批判するところがない。「禹」は自分は粗食するが、祖先の祭祀は十分に行ない、ふだんは粗末な衣服であったが、祭礼のときに着る祭服は、美々しく、住居は高層にしないが、灌漑の用水路作りには力を尽くした。「禹」について、批判するところがないと意味します。

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 天子でありながら、日頃は質素倹約に勤める一方で、国の行事ではその礼式に則るようにする。そして、公共事業を施して民に貢献する。天子としての権威や権力におぼれることなく、自己を律し、民のために尽くすことができた君主だったのでしょうか。現代においては、こうしたあたり前のことが風化しているのかもしれません。

「善」とは、道徳的に正しいということであり、多くの人が「よいこと」だと認めること。人は、きれいなもの、美しいことに感動し、吸い寄せられる。人間も同じで、善なるところに人が集まり、協力してくれるようになる。そうなれば必ず幸福につながる。
「きれいごと」にならないよう「善」を実践し続けるためには、自らを律していなければならない。(引用:トリキウェイ)

 


米国のエゴと利他の精神

  米国を訪問、バイデン大統領と会談した岸田首相が、バイデン氏から高い評価を得られたと自画自賛しているように見えます。

「サンモニ」青木理氏「アメリカの下請け、2軍」岸田首相の日米首脳会談にチクリ/芸能/デイリースポーツ online

 米中による覇権争いがますます激しくなっています。米国が優位性を守ろうとするのは、米国のエゴではないでしょうか。それに加えて、費用と役務を軽くしようとするのも、その現れなのでしょう。

 そんなことに日本が巻き込まれることもないように感じます。

 しかし、米国も心得たものです。自身のエゴを通すためには「利他の精神」を発揮しなければならないことを知っているのでしょう。

 岸田首相がまんまとうまくそれに乗って、説得されているに見えます。米国のしたたかさなのでしょう。その分、日本国民が負担を背負うことになりそうですが。

 

現状維持にこだわる首相、古い秩序への妄信が対立と衰退をよぶ

 

 外部から強い力や刺激を受けて心を動かすことを「衝動」といいます。

 衝動を感じるよう出来事が続けば、その「衝動」に支配されるようになってしまうのでしょう。昨年2022年はまさにそんな年でした。

 その「衝動」は行動の源泉となります。しかし、同時にそれを抑制する方法を知らなければ、時に失敗に突き進んでしまうこともあるのでしょう。いずれにせよ、目的が完遂すれば、それは消滅するといわれます。

 首相が「衝動」に苛まれ、それを抑制しきれずに「盲信」し、それに向かって猛進していないでしょうか。危うさを感じます。

「力による現状変更」に異議を唱えながら、それに力で対抗しようとするのは最たる例なのでしょう。

 

 

G7と国際秩序

 世界で生じる問題の解決に強いリーダーシップを発揮してきたG7の枠組みも以前のように機能しなくなっているようです。

 よく言えば、G7の理念が機能して、それだけ多くの国に機会を提供し、それによって多くの国が力をつけたということなのかもしれません。しかし、その力が増大し、それが現実の脅威となって始めて、自分たちの弱体化に気づいたりするのでしょう。

「時すでに遅し」、弱体化した枠組みを維持、強化しようとの試みに無理があるのかもしれません。

 現状を否定し、過去への回帰はありえないのでしょう。既にG7構成国を凌ぐ経済規模を持つ国が存在し、それを自分らの都合で排除しようとするのなら、それはG7の「エゴ」になってしまいます。それでは嫌われるばかりで、リーダーシップの発揮などありえないのでしょう。

岸田首相「G7が結束して国際秩序を守り抜くべく連携を確認」 | NHK | ウクライナ情勢

 新たな問題を作るのが政治と感じずにはいられません。国際秩序の現状維持を図ろうとすることに無理があるのかもしれません。現状維持は衰退の始まりといいます。

 

 

論語に学ぶ

故(ふる)きを温めて新しきを知る、以って師と為るべし。(「為政第二」11) 

「温故知新」、この四字熟語のもとになった言葉です。過去の伝統を冷えきったそのままで固守するのではなく、それを現代の火にかけて新しい味わいを問いなおすと意味します。

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「伝統を墨守するのではなく、永遠の真理の今日的意味をさぐる。」そうした知的訓練を重ねることによってのみ、目前の複雑で混沌とした、しかし、私たちにとっても切実な現実を鋭くまた筋道をたててとらえることができる。 (引用:「論語桑原武夫

「尚古主義」、古い時代の文物・制度などを尊び、これを模範としてならおうとする考え方のことをいいます。

 首相はこの考えに染まっていないでしょうか。古くなったものをそのまま妄信するようでは進歩を遠ざけるようなものです。

 

 

古にして時に乖(そむ)かず、今にして弊に同せず」という古語もあります。古を守りつつも時流から外れない、現代的でありながらも、時弊に染まらないと訳すそうです。

 民主主義を守りつつも、台頭してくる新興の力に怯えることがなく、またその弊害に染まることもない。力による解決という悪習を用いず、その力を別の何かに転じさせ、より有用なものしていく、これが現代において求められていることではないでしょうか。

「力による現状変更」、「安全保障環境が厳しさを増している」、首相の問題提起に問題がありそうです。

 それよりももっと早く解決しなければならないことが、日本国内に、そして世界に山ほどあるはずです。

 米国を妄信するばかりの首相の目がそちらに向くことはあるのでしょうか。

 

「参考文書」

民主主義の軽視、少子高齢化、ニュース砂漠化…江川紹子が危惧する「今年直面する正念場」

 

日本の治安は大丈夫か、なぜ衝撃的な事件が増加するのか

 

 米国に続いてブラジルでも議会襲撃事件が起きました。大統領選を巡って、選挙方法などに疑いを持ち、選挙結果を受け入れず、それを「大義」とした抗議活動が暴徒化したのでしょうか。

 守らなければ法を犯した一種のテロ行為なのでしょうか。民主主義のほころびのようにも感じます。

 日本を含め世界各地で民主主義の根幹を揺るがすような衝撃的な事件が起こるようになっています。

 国内統治がきちんとなされ、法を守るという「良識」「常識」が育まれていたなら、こうした行為を防止できたのでしょうか。

 

 

銃撃事件

 安倍元首相銃撃事件の山上容疑者が起訴され、メディアによる報道合戦となっています。

安倍晋三元首相銃撃の山上容疑者起訴 民主主義へのテロ、法廷へ: 日本経済新聞

 選挙期間中に起きた、こうした悲惨な事件をテロと呼んでいいのかと疑問を感じます。「テロ」の定義にもよるのでしょう。

 裁判で動機が解明され、事実立証がなされた後の判決が待たれます。

安倍晋三元首相銃撃への「共感」に危うさ 問われる「正しい力」: 日本経済新聞

「事件やそれを起こした人物に、世間一般が共感を寄せることはままある」と記事は指摘します。

「義賊」のような存在や、理不尽に虐げられた人が「やむにやまれず立ち上がる」ような事件は、物語などに取り上げられたりもする。

庶民の側に立っているわけでもない、まさに悪事に手を染める「ダークヒーロー」をほめそやす風潮もある。(出所:日本経済新聞

 日本最後の内戦といわれる「西南の役」で敗れた西郷隆盛は「ダークヒーロー」なのでしょうか。

 蜂起する賊軍にもやむにやまれず立ち上がる「大義」があり、時の政府と対立します。歴史を学べば、政府の統治の問題で、こうした反乱がおこることを知ることができます。

「賊徒」の蜂起が時に革命となり、価値観が一新されることがあることもまた歴史から知ることはできます。そうした出来事があって今日があり、また民主主義が成立しました。難しい問題です。

 

 

勝てば官軍負ければ賊軍

 江戸幕府最後の将軍となった「慶喜」は、どのような人物だったのでしょうか。歴史書を読めば、悪人だったかと言えば、そうでもないような気がします。ただ明治維新を起こす人々からすれば慶喜を「悪人」に仕立てないと、明治維新大義は成立しません。

 一方の幕府からすれば、法を犯し、テロを起こしたのは薩長側であったはずです。

「勝てば官軍負ければ賊軍」といいます。「正邪」、「善悪」の基準も怪しいといことでしょうか。

 しかし、維新が成立したことで、日本の歴史が変わることになりました。そして、今日の民主主義国家 日本が存在します。

古代中国

 古代中国殷王朝最後の君主「紂」は暴君と言われ、配下であった周の武王は武力蜂起し、紂を討ち、殷王朝が倒れ、周王朝が樹立します。紂によって弾圧された臣下を開放し、また、功績のあった者に論功行賞を行います。武王の弟「周公旦」を魯に封じるなどしました。その後、武王は病に倒れ、「周公旦」に周の行く末を託します。

 しかし、当時の常識からしても、国を統治する天子を討つなどは非常識そのもので、不善でもあり、武王の行動を批判した人たちもいたといいます。伯夷、叔斉の兄弟がそれで、武王に諫言したそうですが、聞き入られず、周王朝樹立後、餓死するまでに不服従に徹したそうです。

 それから500年後に「孔子」が誕生します。「孔子」は、この「周公旦」を理想とし、魯の再興を願い、徳治による善政を目指します。しかし、この孔子の理想は叶わず、放浪の身となることも天命かと悟ったといわれます。孔子は政治的に成功しているわけですが、その後、思想家として歴史に名を残すことになります。

 

 

論語に学ぶ

子貢(しこう)曰わく、紂(ちゅう)の不善は、是(かく)の如くの甚(はなは)だしからず。是(ここ)を以て、君子は下流に居るを悪(にく)む。天下の悪 皆(みな)帰すればなり。(「子張第十九」20)

 紂王の不善は、それほどひどいものではなかった。しかし、一度悪い評判が得てしまうと、それが伝わり増幅してゆくものである。それからすれば、君子 教養人は悪徳者とみなされるを嫌う。世の悪という悪は、すべてその人のしたことになってしまうからであると意味します。

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 こうした言葉に触れると、孔子が歴史を学び、道徳を学ぶことの重要性を見つけ出したことは奇跡的なことのように思います。

 普遍的な価値に従う「常識」や「良識」を育むことなければ、法が守られることはなく、統治はおぼつかなるということでもあるのでしょう。

なぜ治安が悪化するような犯罪が増えるのか

 さて、今日の日本の統治はどうなのでしょうか。不正行為が蔓延したり、凶悪犯罪が徐々に増えていないでしょうか。

 こうした行為がなぜ蔓延るようになったのでしょうか。個々人の学びの問題と断じてよいのでしょうか。

 政治家たちが平気で「不善」を行うようになり、それでも法に触れていないと言い訳することをよく耳にするようになりました。元首相も平然と国会でそういう答弁をしていました。「法にさえ触れなければ」、それでいいのでしょうか。

 

 

 コロナ禍で収入が減った世帯に特例で生活資金を貸し付ける国の制度がありました。この制度において、返済免除を求める申請が貸付総数の3割超(約106万件)に上ることが分かったそうです。

コロナ禍の特例貸付、3割が返済不能 2108億円免除決定: 日本経済新聞

 記事によれば、既に約63万件の申請が認められ、約2108億円分の免除が決まり、制度全体の見通しの甘さが浮き彫りになっているといいます。最初から貸付せずに給付にしていれば、こうなることは避けられたという意見もあります。

 とある専門家は「借りた金は返すのが当たり前。こんな形で安易にカネを出し、返せないからと安易に免除するのは、政治と借り手のモラルの劣化を象徴している」といいます。また、別の専門家は、「借りた金を返す、というモラルは徐々に崩れていきます。きちんと返す人がバカを見ることになります」といい、「政府や行政としても、無理矢理回収すると報道の的になり、票につながらくなるおそれもあるので議員は誰もやりたがらない」といいます。

 悪く言えば、政府が良識を育むのではなく、それを守れなくなるような仕組みを作り、それを悪用しているようにも感じます。政治が劣化しているということなのでしょうか。それとも民主主義の限界なのでしょうか。

 これでは統治がままならず、治安が悪化するのもわかるような気がします。

 

「参考文章」

安倍元首相銃撃事件 山上容疑者を起訴 裁判の争点は | NHK | 安倍晋三元首相 銃撃

“ブラジルのトランプ”支持者が議会襲撃 いったい何が? | NHK

 

【グローバルリスク2023】日本が世界のリスクの中心地か、米中対立、生活費の危機

 

 ダボス会議 WEF世界経済フォーラムの年次総会が16日から3年ぶりに対面で開催されます。今年の年次総会のテーマは「分断された世界における協力の姿」といいます。

 世界の分断と今後の協調の可能性や、インフレ、食糧危機、気候変動といった問題のなどが議論されるそうです。

ダボス会議、16日から開催 世界の分断と協力を議論: 日本経済新聞

 また、WEFはダボス会議に先立ち、国際社会を取り巻くリスクを分析した「グローバル リスク レポート 2023」を発表、短期的にはインフレの高止まりなどによる「生活費の危機」、長期的には「気候変動対策の失敗」を最大のリスクに挙げたそうです。

 

 

 JIJI.comによれば、報告書は、世界的にエネルギーや食料の供給が逼迫する中、今後22年以内に生活費の高騰が「より広範な人道的危機に発展する恐れがある」と指摘し、また、今後10年のうちに世界各国が協調し、気候変動に効果的な対策を施さなければ「地球温暖化と環境破壊が続く」と警告しているといいます。

懸念、アジア太平洋地域での地政学リスク

「グローバル リスク レポート 2023」に目を通してみれば、今後 2 年間で、世界の大国と国家による市場への介入との間の衝突が増加し、経済対立は当たり前になるといいます。経済安全保障が優先され、他者の台頭を抑制するためにますます攻撃的に展開されると指摘します。これまでのグローバル経済の脆弱性を浮き彫りにし、不信と分断の悪循環をエスカレートさせるリスクがあるといいます。

Global Risks Report 2023 | 世界経済フォーラム

地政学が経済よりも優先されるため、長期的には非効率な生産が増加し、価格が上昇する可能性が高くなります。(出所:世界経済フォーラム

 レポートは、特にアジア太平洋地域において、懸念の高まりを引き起こしていると指摘しています。

 米中の経済、軍事における覇権争いに激しくなっているということなのでしょう。何もそれに好んで巻き込まれることはないような気がします。ましてその一方に加担し、先兵になるようことをすれば、喜ぶのは対立している当事国の米中で、日本は損するだけではないでしょうか。

 もう少し賢く、対立の間を上手にすり抜けて、平和に導く努力とともに、漁夫の利を狙うあざとさをもつべきなような気がします。日本が対立に油を注いで、火を大きくすることはないのでしょう。

 

 

論語に学ぶ

中庸の徳為る、其れ至れるかな。民 鮮(すく)なきこと久し。(「雍也第六」29)

 道徳における中庸の位置は、この上ないものだ。しかし、人々は中庸を欠き、争うようになって、もう久しいと意味します。

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「中」は偏らず、過ぎたると及ばざるとのないこと。

「庸」は平常、あたりまえで変わらないこと。

「中庸」とは、どちらにも片寄らないで常に変わらないことを意味します。

 孔子の教えにあっては、忌憚のない直情径行を夷狄としていやしみ、社会において突出するような行為をきらって、庸徳庸行を尊ぶといいます。

 こうした東洋の教えを知る国が、首相の行動をみて、それではまるで「夷狄」ではないかと忌み嫌うのではないでしょうか。

 

 

 WEFの分析だけが正しいということはないのかもしれませんが、肌感覚ではよく理解できるものです。

「生活費の危機」が現実のものとなり、それによって、社会がより不安定化していくことが最大のリスクのようにも感じます。そうしたことが顕在化してきていないでしょうか。

 いずれにせよ、日本が世界のリスクの中心地になることは避けなければならないのでしょう。

 

「参考文章」

「生活費の危機」が最大リスク 世界経済フォーラム報告書:時事ドットコム

 

自説を吹聴する首相は、ルビコン川を渡りたいのか

 

 首相がG7各国を訪問しています。伝わるニュースは、安全保障関連や中国を念頭にした自衛隊との共同訓練などなど。その執着ぶりがうかがえます。

 平和維持のためなのでしょうか。そうであるなら、もう少し違ったアプローチがあってもいいのではないかと思えます。

日伊首相、安保対話創設へ | ロイター

 こうした報道ばかりに触れると、危機が迫っているわけでもないのに、すごい危機が目の前にあるように勘違いしそうです。政府はそんなたくらみをもっていないかと疑いたくなります。

 現実はどうなのでしょうか。危機を煽れば、防衛費増額のための増税を実現しやすくなる、そのための世論操作でもあるように思えてしまいます。穿った見方なのでしょうか。

 

 

世論操作

「のちに振り返れば、今が転換点なのか。あの時のように」と、信濃毎日新聞の社説はいいます。 歴史は繰り返さないが、韻を踏むということでしょうか。

〈社説〉国防と報道 「非常時」の歴史に学ぶ|信濃毎日新聞デジタル 信州・長野県のニュースサイト

2022年はロシアによるウクライナ侵攻と米中対立、北朝鮮のミサイル発射を受け、防衛論議が一気に高まった。新聞の論調は分かれるが、一部大手紙は政府方針の是認、推進論が目立つ。(出所:信濃毎日新聞

 現在の世界では、外交などで各国が巧妙な情報操作技術を駆使しているといいます。こうした状況に、防衛関係者らは「情報戦に対抗するには世論を正しく導く戦略は当然必要」と考えているといいます。

 こうした事態に「踏みとどまる力を」と記事は指摘します。

戦前の新聞は「非常時」に直面して変質した。

ただ、その場面にいた新聞社や読者は、引き返せぬルビコンをいつ渡ったのかさえ気づかなかっただろう。今、安保情勢の変化を理由に他国を攻撃できる武器を積み上げる抑止論を「専門家」が声高に叫んでいる。それは人が常に理性的な計算で行動するという幻想に基づく。説明のつかない偶然、判断、行動は起こり得る。(出所:信濃毎日新聞

 権力による誘導やウソを見抜き、圧力に流されず、はね返す報道の力が試されるとも記事は指摘しています。

 

 

ルビコン

 古代ローマ期、あのカエサル(シーザー)が「賽は投げられた」と叫び、元老院令を無視してルビコン川を渡河したということから、もう後戻りはできないという覚悟のもと、重大な決断や行動を起こすことをいいます。

渡河の決断:ルビコン川を渡ったカエサル 禁を犯した大決断とは?|NIKKEI STYLE

 ただカエサルはその著書「内乱記」の中で、ルビコン川を越えたことには触れてさえいないそうです。

 自分が法を破ったという事実を認めまいとしたのかもしれないといいます。

『内乱記』は、一連の出来事を正確に書き表そうとする試みというよりは、自己正当化のためのものという色合いが濃い。カエサルは、自分をローマに盾突く反乱軍のリーダーではなく、ポンペイウスによる独裁支配からローマを解放する英雄として描いているからだ。(出所:日経スタイル)

 自己を正当化し、自分にとって有利な話が広まれば、自分の考えや自分自身を認めさせやすくなることはいうまでもないことです。

 広告などでもよく使われる手法です。

 ルビコン川を渡河したカエサルは独裁者となってローマに君臨します。しかし、その結末は悲しいものであったともいいます。

 

 

 政府や政権与党が自説を押し通そうと、様々な手段を講じようとするのでしょう。それもまた言論・表現の自由なのかもしれません。

 そもそも一連の首相の行動の動機は何なのでしょうか。真に「国民の生命と生活を守る」ことから発せられているものでしょうか。政権維持が「一義」で、まさか「二義」になってはいないかと心配になります。

 権力を監視するのがメディアの本来の役割と言われています。このところを鋭く切り込んで欲しいものです。

論語に学ぶ

其の鬼に非(あら)ずして之を祭るは、諂(へつら)うなり。義を見て為さざるは、勇無きなり。(「為政第二」24)

 自分たちの祖霊でない他家の霊を祭るのは、その有力者に対する諂いであって、なすべきことと、なすべからざることを、はっきり見定めたうえ、なすべきことをせずにすますのは、勇気がない、つまり卑怯であると意味します。

dsupplying.hatenadiary.jp

「義を見て為さざるは、勇無き也」という言葉は、日本の武士道に大きな影響を与えた言葉と言われています。

「現代の私たちでさえ、この言葉が決定的瞬間に「正義」の行為への発動を支えているように思われる」と桑原武夫はいいます。

「二義」であっても、それがあたかも「正義」であるかのように扱えば、この言葉と共に人々の心が高揚することがあるのかもしれません。恐いことです。そうあってはならないはずです。

 

「参考文章」

「メディアが国に『動員』されている」とツッコミも…「新しい戦前」で問われる“報道の力”《タモリの発言が話題に》 | 文春オンライン